I Will Fear No Evil.

Written by kaz-a


 薄曇りの空に、生暖かい南風の吹く校庭。洞木ヒカリは一人で校庭の端、新体育館の設立で今は倉庫代りとなっている体育倉庫の裏にある不燃物収集所に来ていた。
 六時間目の授業中、副担任で理科担当の赤木リツコから週番として2つの軽作業を頼まれてしまったからだった。
 クラスの人数分のプリント――授業で使う資料――をホッチキスでまとめて簡単に製本。その後、理科室の不燃物の投棄。
 リツコから手渡された段ボール箱、その中にあったコンビニの白いビニール袋に入れられた、割れたビーカーや試験管、メスシリンダーや寿命の切れた蛍光燈を、ガラス類専用と白いペンキで大きく書かれたドラム缶の中へ、再度ガラスを割らないように注意を払いながら捨てると、今度は段ボール箱を丁寧に潰し、それを可燃物と書かれた蓋付きの大きなゴミ箱へ入れた。
「鈴原の……バカ」
 ヒカリは同じ週番でありながら、身勝手な口実で仕事を全て彼女に押しつけて、さっさと逃げてしまった熱血純情少年のことを小さな声で罵った。
 ――告白するチャンスだったのに、逃げるなんて。
 今月に入ってこれで何度目だろうか、ヒカリは心の中に秘めた彼への思いを、伝えようと思いながら伝えられないことに苛立ちを隠せなくなっていた。
「鈴原の……バカ」
 再度小さな声で罵った後、両手を頭の上で組み、背伸びをしつつ、空を見あげた。
 東の空にどんよりとたれ下がる黒い雲と、しめっぽい大気の匂から、早く帰らないと雨が降りそうだと感じ取り、教室へ戻ろうと振り返ったその矢先、ヒカリは体育倉庫の中に見知った二人がいることに気付いた。
 ――アスカと……碇君?
 鉄格子のついた窓枠と表面の細かな傷と汚れで変色したガラスの向こうに見える少女の横顔と、頭に乗った赤い二つの髪飾りから、クラスメイトで親友の惣流アスカ。彼女の前に立つ男はアスカの幼なじみの碇シンジに間違いなかった。
 ――も、も、もしかして、こ、こ、これって告白シーンなの?
 ガラス越しのせいで二人の話し声は聞こえないが、二人のしぐさから想像を巡らし、そう結論づけたヒカリは、のぞき見という行為にとまどいを覚えながらも、結局好奇心が勝ち、そのまま二人から目を離さずにいた。
 ――いいなぁ、アスカ。私も鈴原に……
 火照ってくる頬を意識しながら、ヒカリはちょっとだけ先の展開を想像してみる。
 ――こ、この後、も、もしかして、キ、キス。キ、キスだけなら……だめ、だめよ、私たちまだ……なんだから、でもキスだけなら、ゆ、許せる気が、で、でも、やっぱり、そういうことは……
 ヒカリの予想通りに二人の影が重なっていく。唇と唇が触れるだけのキス。
 ――キャー、キャー、キャー、キャぁ……あ、ああ!?
 だが、目の前の光景は、彼女の想像を超えた領域に踏み込んでいった。
 再び触れあう唇と唇。磁石のように引きあう腰と腰。シンジの手がアスカのスカートをまくり上げる。アスカはその手を拒否せずに、媚びた表情を浮かべながら侵入者を受け入れていく。
 ――え、ええぇ……!!
 ガラスの向こうで抱き合い、体をまさぐりあう二人。その後、シンジの方が、アスカに押し倒されるかのように、彼の背にあった、跳び箱に体重を預けた。その後、アスカは彼の前にしゃがみ込むと、ベルトを外し、ズボンを一気に下げた。そして彼女はためらいもせずシンジの股間に顔を埋めていく。
 ――うそ、うそ、うそぉ。
 位置関係からヒカリの目にはアスカが何をしているかよく見えなかったが、少女の頭の動きと、少年の表情から、想像はついた。
 しばらくして、アスカが立ち上がった。彼女はうつむき、少しだけ腰を落とすと、両手をスカートの中に入れた。そして、腰から下をモジモジと動かしたあと、右足を浮かせて、何かを足から抜き取る。次に左足でも同じ動作を繰り返すと、手にした薄いピンク色の布きれをスカートのポケットにしまい込んだ。その後、アスカは自らスカートをたくし上げてみせる。
 髪が揺れていた。ロングヘヤーがひるがえった。肩までより長い赤みがかった金髪を振り乱していた。シンジに体を押しつけ、仰け反り、求めるアスカの姿にヒカリは圧倒されていた。
 どのくらいそうしていただろうか、すっかり目の前の光景に心を奪われていたヒカリは、自分の唾を飲み込む音とポツポツと降り出した雨によって、現実に引き戻された。
 自分が悪いわけではないのに、こみ上げてくる罪悪感。そして死にたくなるほどの恥ずかしさ、体中の血液が一気に首から上に集中する。
 ヒカリはその場から逃げ出すと、人気のなくなった雨の校庭を駆け抜けていった。

 何処をどう走ったか覚えていない。ただ、気づいたら彼女は教室の自分の席に座っていた。
 ――不潔、不潔、不潔よぉ。
 学級委員を勤める関係上、同じクラスの男子の中では堅物で通っているヒカリだって『あんなこと』を知らない、興味がないわけではない。
 その実体は、はっきりいって、耳年増だったりする。
 事実、友達とのパジャマパーティ――お泊まり会――で、その手の話題となれば、顔を真っ赤にしながらも積極的に参加、姉の買ってきたレディース・コミックを盗み見て覚えた知識をお披露目したりするし、彼女の机の引き出しの奥には、クラスの女子の中でこっそり回覧され、何度もダビングを重ねられて流通しているアダルトビデオ――それも修正ナシな非合法モノ――が三本ほど隠してあり、時々、特にテストの終わった日などに、深夜こっそりと一人で観賞した後、いけないことにふけってしまい、日課の朝のお弁当づくりがつらくなることも何度かあった。
 しかし先ほど目にしたのは、そんなたわいのない猥談やビデオテープが子供だましに見えるほど衝撃的な光景であった。
 ――アスカったら碇君と……もしかして二人っきりの時はいつもあんな事をしているのかしら。それどころか、もっといろんなことも。
 ヒカリの右手は無意識のうちにスカートの中にのびていた。
 ――不潔、でも……
 指先にわずかながら湿り気を感じる。
 ショーツの股布に生暖かい染みが広がっていく。
 それもぬるりとした、粘りけのある液体がだ。
 ――やだ、濡れてる。
 まるで濡れ具合を確かめるかのように指が二度三度と股布に触れた。
 そのたびに腰がきゅんとなる。
 ――こんな事、こんな事ぉ、
 怖くなって手をスカートから出そうとした。その拍子に右足の内股を五本の指がなぞった。
「ふぅ」
 息が漏れた。
 腕の動きが止まり、手のひらが太股に張り付く。
 視線を下に落とし、胸元を見ると、ここ数ヶ月でカップ二つほど成長した乳房が、カップ一つ小さいブラジャーから溢れそうになっているのが、制服のブラウスの上からでもはっきりわかる。
 左手が右の胸にのびていく。
「っ」
 掌が制服ごしに彼女の豊かな乳房に触れた瞬間、熱いものがそこに生まれた。
 小さなブラジャーの中で乳首がこすれ、ジンジンとした快感が生み出されていく。
 ――だ、だめぇ、
 そう思いながらも、掌が乳房に張り付き、ゆっくりと変形させていく。
「う、んん……」
 今度は声が漏れた。
 スカートの中で右手首が内側に曲がり、愛液で張り付いたショーツの上を親指が再度つつく。
 再び漏れそうになる声を、必死にかみ殺す。
 布地にくっきりと浮かび上がった縦溝を、親指の爪が下から上、上から下と真っ直ぐになぞる。
 ――私、私、こんな事してる、学校で、学校で、一人で悪い事してる。悪い子。ううん、私悪くない、悪いのはアスカ、それに碇君。悪いのはアスカと碇君。それと……鈴原。
 自己弁護の後、頭の中に白い霞が下りはじめ、それと同時にヒカリの中で何かのスイッチが入った。
 閉じた瞳の中に、先ほどの光景が再びよみがえる。ただし配役が変更されて……

 左手を右胸から離すと、その手を自らの頬に持ってゆく
 手のひらを頬の上で滑らせながら、人差し指の先で上唇に触れ、ゆっくりと唇をなぞる。
 ――私、キスしてるの。彼と、鈴原と、トウジと、キスしてるの。
 指を相手の唇に見立てて、三回ほど繰り返すと、半開きのなった唇に人差し指を差し入れ、舌先でしめらせる。
 大人のキスのつもり。
 中指と人差し指で舌を挟み、中指の腹を舌の粘膜の上で滑らして刺激を与える。
 ――私の番だよね
 今度は逆に舌先を動かして、口の中で中指の腹を上から下、下から上に舐め上げた後、舌先を左右に動かした。
 ――次は、
 先ほどの光景を思い起こすヒカリ。彼女は唾液で濡れた指で右耳の耳たぶを挟むと、爪を立てた。
「だめぇ、噛んじゃだめぇ」
 小さく否定の台詞を二度繰り返した後、指先を耳の裏から、首筋、そして胸元へ、時間を十分かけて滑らせていく。
「は、はん、うん」
 上半身が心持ちのけぞり、顎が上を向くと同時に甘いため息が漏れる。
 ――キスされてる、私、いっぱいキスされてる。
 右手が少しだけスカートの奥に進入、中指がびしょ濡れになった布の上から秘密の場所にふれ、親指の代わりをつとめはじめた。
 左手が彼女の中で彼のささくれだった右手に変わると、胸元の赤いリボンを解いた。
 ――ダメ、ダメぇ、は、恥ずかしいから、やめてぇ。
 ――おねがいや、いいんちょ。わし、わし、いいんちょの事、スっキやねん。めちゃめちゃスキやねん。だから、おねがいや、な、な。
 ヒカリの耳に聞こえるはずのない声が聞こえてくる。
 閉じた瞳の中で彼が真剣な顔をして、頭を何度も下げる光景が浮かぶ。ムード無いなぁと思いながらも、彼らしいと思えてきて、唇にちょっとだけ笑みを浮かべてしまう。
 ――いいよ、トウジなら。トウジだから……いいよ。
 ヒカリがうなずくと同時に、トウジの右手に見立てた彼女の左手が荒々しく、乳房を掴んだ。
「……っ、い、痛い」
 思わず漏れた声に反応して、乳房から手がのけられた。
 ――か、かんにんや。
 ――いいの、でもちょっと待って。
 ヒカリは右手をスカートの中から抜き取ると、うつむきながら両手で制服のボタンに手をかけた。
 一つ、二つ、三つ、四つ、彼女はシャツブラウスのボタンを上から順々に外していった。そしてゆっくりと前をはだけてみせる。
「優しくしてね」
 自分の妄想に浸り込んでしまったヒカリは、声に出してしまった。それと同時に再び彼女の左手が右の乳房をブラのカップ上から優しく包み込む。
「ひゃん」
 手の動きにあわせて、胸が熱くなった。その熱がヒカリには心地よかった。
 サイズの小さいブラが両の乳房に食い込み、甘い痛みが胸から背中へ突き抜けていく。
 ――そ、そこ、やさしく、優しく。
 内側から押し上げられるように、乳輪が盛り上がり、陥没気味の乳首が緩やかに起立していくのがわかる。
 物足りない。さわってほしい、直接さわって。そこで彼女は、少しだけ荒々しく、ブラジャーの中に手を入れた。
 パキン。
 プラスチック製のフロントホックの留め金がその拍子に壊れ、左右の乳房があらわになった。だが、ヒカリはそれを無視して一人遊びに耽る。
 ヒカリは年齢に似合わず豊かな乳房を下から支えるようにすると、人差し指で乳首を弄びはじめた。爪で乳首をはじく。するとはじくたびに胸全体がどくどくと脈打つように感じられ、熱い快感に焙られて、胸の張りが増していく。
 今まで遊んでいた右手が、再度スカートの中に進入する。今度はためらうことなく、指先を濡れた股布へ強く押しつけた。
 じわりと蜜が溢れ、湿り気を帯びた面積が一気に広がる。腰が刺激を求めて前に前にとずり上がっていく。
 ――いいんちょのココ、こんなになっとる。
 ――い、いやぁ。そんなこと……ない。
 ヒカリは体をひねって抵抗するものの、妄想の中の「トウジの指」は遠慮知らずの上に彼女の体のことをよく知っているらしく、指先を細かく振動させて、もっとも弱いところを責め立て、夢中にさせていく。
「いっ、イイ」
 指先を秘裂の上端にある豆粒大の突起――クリトリス――へと持っていった。形が変形するほど親指で押しつぶし、同時に中指を縦溝に強く押し当て、そのまま指の力を緩めずにぐりぐりと刺激を与え続ける。
 縦溝の合わせ目から途切れることなく蜜がにじみ出て、ヒカリの手のひらや手首までをべっとりと汚し、指と指の間に粘りけのある糸を引いた。
 また、指先の力が強まる度に繊維の隙間から蜜が布地の外へ滴ると、ショーツの上を一気に流れ落ち、イスの上にたまっていく。
 今までヒカリの胸をまさぐっていた左手がだらりと垂れ下がった、そして、彼女は左手を右手と同じくスカートの中に侵入させた。
 ――脱がすで。
 ――だめ、それはダメぇ。
 右手と左手が、ヒカリのモノからトウジのモノに変わると、ショーツに手をかけた。
 妄想の中で何度も頭を振り拒否を伝えるが、逆らえるはずもなく、最後には自らお尻を浮かせて、腿の半ばまで引きずり降ろした。
 遠慮知らずな「トウジの指」が、侵入者として、ヒカリの処女地に訪れた。指が直接秘裂をなぞりあげ、その拍子に爪が秘裂のなかの花びらに絡まり、いびつなピンクの菱形の中から新たな糖蜜をかき出した。
「ヒャん」
 鋭い快感が背筋を下から上に走り抜け、イスの上のお尻が撥ねる。
 指が溢れた透明な粘液をすくい取ると、クリトリスにまるで円を描くように塗りつけた。すると、円を描く度に快感が生まれ、やがて大きなうねりとなって、ヒカリを翻弄していく。
「ああッ……ヤ……ん……ん……ふッ……」
 快楽の渦に巻き込まれて、座った姿勢でいるのが辛くなったヒカリは、そのまま上半身を倒し、机上に頭を横たえた。その時、彼女の半開きになった唇から、粘液がこぼれ、頬の上をつたっていく。
 指が入った。ヒカリにとっての「トウジの指」が先端だけ侵入をはたした。指の腹が粘膜をこすると、とろけきったその場所から、秘裂をなぞっていたときよりもずっと大きな快感が奥から絶え間なくうねりでてくる。めくれあがった肉ひだが、ぬかるみをまさぐる指にからみつき、卑わいな音をたて、音がもうろうとした彼女の耳にまで届いた。
「んふッ……くッ……やンッ……はンッ……」
 ――ダメぇ、もうダメ、お願い、おねがいだから……
 ――お願いってなんや、
 ――だから、だから……ね
 ――いいんか? 本当にいいんか?
 ――う、うん。イイよ、鈴原になら、トウジになら……いいよ。
 ――ヒカリ、いくで
 ――うん。
 体の奥からふき上がる衝動に駆られて、数回ためらった後に思い切って指を奥まで突き入れた。
「ン・はァ!」
 ショッキングピンクの閃光がヒカリの意識を貫き、凄まじい快楽のうねりに翻弄されて、全身がガクガクと痙攣し、目の中で無数の火花が飛び交った。
 絶頂。
 そして――そして、ヒカリの頭の中に真っ白なペンキがぶちまけられた。

 先ほどまで降っていた雨が唐突に上がり、夕日を浴びた世界が赤く染まるころ、机にうつぶせたままになっていたヒカリが体を起こした。
 彼女は今の自分の姿に気づくと、小さな悲鳴を上げながら両手で胸を押さえ、体を小さく隠した。
 その後、彼女は天敵から隠れた小動物のように、おずおずと周囲を見渡した。そして、安心したかのようにため息をついた後に、あわてて立ち上がろうとしてよろけ、教室のサッシの窓枠をつかんで、体を支えた。
 窓に映る自分の乱れた姿を見て、ヒカリは顔を夕日に負けぬほど真っ赤に染めながら身繕いを始めた。
 ――学校でこんなことしちゃうなんて……
 膝に絡まったショーツに手をかけ、ためらった後に、元来それがあるべき場所へ引き上げる。下半身に冷たく張り付くショーツが不快感を主張するが、学校から家までの距離を考え、彼女はそのまま我慢することにした。
 ――私、悪い子だったんだ。
 腰のホックとファスナーが外れてしまったスカートを再びはき直す。前と後ろに広がるシミが気になるが、こればかりは仕方がないので、「雨に濡れてこうなったの」と自分の中で折り合いをつける。
 ――私、悪い子なんだ……悪い子だから……
 次に、右腕をブラウスの袖から抜くと同時に壊れたブラジャーのストラップを外して、再びブラウスに手を通した。そして左腕も同じようにすると、外したブラジャーを丸めて通学鞄の中に押し込んだ。
 ――イイよね……もっと悪い子になっても、アスカと碇君みたいになっても……
 床に落ちた赤いリボンを拾い上げると、窓を背にして立つ。ブラウスの襟を立て、そこにリボンをかけた後に、襟を直す。
 ブラウスをスカートの中に押し込み、胸元を正そうとして、ヒカリはいったん手を止めた。
 彼女は教室の一角――鈴原トウジの机――を見据えると、
 ――鈴原となら……怖くない……よね。
 胸元でブラウスを開き、年齢には不似合いな、大人の女の誘う笑みを浮かべて見せた。

 翌日、学校内に四時間目の終了を告げるチャイムの音が響き渡った。
「起立、礼、着席」
 ヒカリのかけ声の後、購買部組は二つの出入り口に向かって一気に駆け出し、お弁当組はそれぞれ仲良しグループに分かれ、お気に入りの場所を確保していった。
 その中でいつものようにシンジから自分の弁当箱を略奪してきたアスカとぶっきらぼうにトウジへドカ弁を渡したヒカリがたわいのないおしゃべりをしながら、机の上に店を広げていく。
 しばらくして、おかずの上で箸をさまよわせ、大好きな卵焼きとハンバーグのどちらから食べようかと悩んでいたアスカにヒカリが何気なく声をかけた。
「あのね」
「なに?」
「体育倉庫の鍵、持ってるでしょ」
「え……」
 ヒカリは今の一言に狼狽しきっているアスカの前に左手を差し出した。
「誰にもいわないから」
「見たの? 見たんだ……そう……」
「拾ったことにして返すから」
「軽蔑……してない?」
「友達だもの、そんな事しないけど……」
 そこまで言うとヒカリは、左手を差し出したまま、右手の箸でタコを模したウインナーソーセージを突き刺し、口に運んだ。
「返しといて」
 ぶっきらぼうにアスカは言うと、差し出されたヒカリの手のひらに鍵を置いた。
「それと、もう一つ。碇君を通して鈴原にね、今日の放課後、体育倉庫に来るように伝えてくれないかなぁ」
「え!?」
「友達だから、お願い聞いてくれるよね、アスカ」
「ちょっと、それって……まさか……ヒカリ……本気?」
「こ、告白だけよ、告白だけ」
 ヒカリは小声で言い切ると、アスカを無視して、離れた席で彼女のお手製弁当をガっついているトウジの方に視線を向けた。
 ――今日は逃げないでよ、す・ず・は・ら。

 次の日の朝、シンジとともに登校中のアスカは、ヒカリを見つけると側に駆け寄った。
「ヒカリぃ、おはよ」
「あ、おはよう、アスカ」
 いつものように朝の挨拶を返すヒカリ。だが、アスカは彼女がいつもと違うことに気づいていた。
「ふ〜ん、不潔3連呼のヒカリちゃんは何処にいっちゃったのかなあ?? 告白だけじゃなかったんだ」
「な、なにを……」
 人の悪い笑みを浮かべたアスカは、真っ赤になって顔を背けるヒカリを、のぞき込みながら小声でささやいた。
「へへぇ、アタシも今のヒカリのような歩き方したから。な〜んていうか、丸一日ぐらい何かが入っているような感じが残るのよねぇ」
「……あ、わ、わ」
 にこっと笑って、右手を差し出すアスカ。
「バレバレ……ところでぇ、友達だから誤魔化すのを手伝ってあげてもいいけど……昨日渡した鍵でいいわ」
 とまどいながらも例の鍵を差し出すヒカリ。にやにやとした表情でシンジの元へ戻ろうとするアスカ。
「友達だから、合い鍵、作って、くれるよ、ね」
 アスカはヒカリの問いかけに背を向けたまま、片手を挙げて答えた。

 〜 ヲ・ワ・リ 〜


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