「はぁ〜、今日はいい天気だよな。木陰にいる方が涼しいって思う季節になったな、マックス?」
「あと1週間もすれば、夏期休暇だからね。もう夏本番って感じだね」
今は昼食時間───。
俺とマックスは、彼が告白の場所に選んだ丘の大きな木の下でランチをとっていた。
俺とマックスが恋人同士になって以来、学園内は大騒ぎになった。
高等部の中で憧れの存在である生徒会長に恋人、しかも相手は普通の転入生…。特にマックスを慕っていたファンクラブの生徒達からのやっかみ半分の嫌がらせには困っていた。
だが…。生徒会長の威厳というか、マックスが直接注意したお陰で彼らもしぶしぶ納得し、今はいやがらせも無く平穏な学園生活を送っていた。
マックスとは1学年違うので、授業中に会うことは、まず無い。学園内で会える時間といえば、昼食時や放課後など、わずかな時間だけだ。マックスは生徒会長という事もあって、放課後は生徒会活動などで忙しいので、昼食時間の方がゆっくりと会えるのだ。
そして今日も、いつものようにマックスとランチを取りながら雑談をしていた。話しも弾み、俺がサラダに手を付けようとした時、マックスはこんな事を尋ねてきた。
「ねぇウェイン。…夏期休暇の事だけど、覚えてる?」
「夏期休暇?───ああ、覚えてるよ。親父の仕事が予定より長引いて一緒に過ごせないから、マックスの家に遊びに行くって話だろ?…でも、遊びに行くまで1ヶ月も先じゃないか」
「そう、それでね…。休暇初日から僕の家においでよ、少しでも長く君と一緒にいたいと思ったんだ」
彼は嬉しそうに俺を見つめながら言った。
確かに遊びには行きたいけど、でも家族水入らずで過ごすせっかくの長期休暇。その初日から俺が行っては迷惑ではないだろうかと考えて遠慮して断った。だが、今日の彼はいつもと違って意見を譲らず、更に誘ってきた。
「遠慮なんてしないでくれ、僕は君と一緒にこの休暇を過ごしたいんだ。家族だって大歓迎さ!それとも、僕の家に長く居るのはイヤかい?」
「嫌だなんて…そんな事ないよ!」
「よし!それじゃ決まりだね。初日の朝に迎えを出すから。…休暇はとても楽しくなりそうだ」
「………」
と、半ば強引に押し切られたカタチで、俺はマックスの家で夏期休暇を過ごす事となった。
そして夏期休暇初日の朝。寮の前にマックスの家からお迎えの車がやってきた。
運転手が車から降り「クルーズ様でいらっしゃいますか?」と恭しく尋ねてきたので俺は「はい、そうです」と答えると、彼は後部座席のドアを開け、車内へと促した。
身体に負担をかけない、ゆったりとした高級革張りのシートに凭れながら、快適な運転で車が走る事、約30分。門が自動で開いて、周りを緑に囲まれた豪邸に到着した。
彼の家は、どことなく東洋文化を意識したアジアンティストな家づくりだった。
玄関には南の国にありそうな植物や、置物が置いてあった。冒険家として世界を飛び回っている親父が見たら喜びそうな物ばかりだな、と思っていると少し奥に使用人と思われる女性が3人立っているのが目に入り、俺が近づくと深々とお辞儀をして出迎えてくれた。
「いらっしゃいませ、クルーズ様。マクシミリアン様が奥でお待ちしています。どうぞこちらへ」
「あ、はい」
案内をしてくれる女性に付いて玄関を抜けると、マックスが嬉しそうに微笑みながら立っていた。
「いらっしゃい、ウェイン。待っていたよ」
「おはよう、マックス。今日からお世話になります」
「ふふっ。さぁ、リビングの方へ。父達が君が来るのを待っているよ」
彼は俺の手を掴むとリビングへと歩き始めた。
手を繋ぐの恥ずかしいんだけどな…、と思ったが離してくれそうもないので、手はそのままで彼の後ろを付いていく事にした。
彼の家族は俺を快く出迎えてくれた。
優しそうで話し上手な父親、穏やかな表情を見せる美人の母親(どうやらマックスは母親似のようだ)、そして明るい兄弟達。つい話が弾んでしまい、何時間もリビングで過ごしてしまった。
その間、マックスは母の手伝いをしたり俺に飲み物やお菓子を出してくれたり、とても気を遣ってくれた。
「あら?もうお昼ね。ウェインさん、何かご希望のメニューはおありかしら?」
「え?えーっと…なぁマックス、何食べようか?」
「ふふっ、君の好きなのでいいよ。何か希望を言ってくれ」
「そ、そう?それじゃ…ピザとかパスタとかがいいかな、みんなでワイワイ食べれそうだし」
「わかったわ、あいにく小麦粉を切らしているからピザ生地は作れないけど、乾燥パスタがあるから今日はパスタを何種類か作りましょう。少し時間かかりますから待っていて下さいね」
「はい!あ、もしよければ俺、手伝います。何か手伝おう事ありますか?」
「…ありがとう、ウェインさん。それじゃソース作りを手伝ってくれるかしら」
俺はソースの材料を受け取りボールにあけていると、マックスも「僕も手伝うよ」と言って俺と共にパスタ作りを手伝い、出来上がったアツアツの美味しいパスタをみんなで食べた。
今は寮生活をしているから、クラスメイト達と大勢で食事をしているけど、学園に入る前は親父の孤児院で一人で食べる事が多かった。
こんなにアットホームと言うか、家族団らんで食事をしたのは初めてだったので、なんだかとても楽しくて嬉しくて…俺は食事中に思わず泣いてしまった。
せっかくの楽しい食事時間を壊してしまった俺は、泣きながら何度も謝った。
するとみんなが俺を気遣ってくれて…。特にマックスは俺に寄り添いながら泣きやむまで背中を優しく何度も撫でてくれた。 |